私は湯治場が大好きで、これまで北東北の温泉場によく訪れていました。
私は宮城県の北方の街に住んでいたことがありますが、当時はその街よりも北の温泉場が私のメインフィールドでした。
なぜ北なのか?理由は、今後居住地を移した場合に北東北を訪れることは難しくなるだろうと考えたからです。関東、あるいはそれ以西に居を移した場合でも、栃木県北部や福島県、宮城県南部といった南東北エリアを訪れるのはさほど難しいことではないでしょう。しかし、そこからさらに数100㎞足を伸ばそうとは、よほど時間に余裕のある時でない限り、思わないでしょう。であれば、北東北の入り口に住んでいる今のうちに北東北を攻略してしまおうと考えたわけです。
その後、中部地方に居を移しましたが、豊穣な北東北の風景はやはり忘れがたく少々無理をしてでも時折訪れています。となると、たいていの場合は南東北を通過するわけですし (フェリーを利用する場合を除く)、南東北近辺が距離的に宿泊するにはちょうどよい場所にあたるため、このエリアの湯治場を探すようになりました。探してみると、私にはちょっと意外だったのですが、福島県がかなりの湯治天国だったのです!しかも、福島県の山側 (会津地方)は雪が多く、冬季閉館という本格的な湯治場がわんさかと・・・。
(北東北の湯治場は、意外と通年営業が多いように思います。ありがたいことですが。)
福島県での初めての湯治宿は、ここ横向温泉 中の湯旅館に決めました。中の湯旅館は、福島県で初めて湯治が始まった宿だそうです。見てください!この風格に満ちた外観を!!
実はここ、宿泊予約のときからひと悶着ありました。その日は宮城と岩手の県境の街におり、今晩は (ちょっと近いけど)横向温泉に泊まるべと、電話で空きを確認しました。
私
「今晩おとな1名、素泊まりで部屋は空いてますか?」
宿の方
「ええ、空いてないことはないんですが・・・。お客さん、こちらにお越しになったことはありますか?」
私
「いいえ、初めてです (来て欲しくないように聞こえるんだけど、何か不都合でもあるのかな??)」
宿の方
「ここはですね、お湯の他にはなんにもないですよ~!食事も売店も何にもなし。大丈夫ですかね~?」
私
「ええ、まったく問題ありませんよ。中の湯さんは初めてですが、自炊宿にはしょっちゅう泊まっていますので!
(俺は、(自称)湯治マニアだぜ!!)」
宿の方
「ほんとですかね、知りませんからね・・・。では、ご一泊承りました。
ところで、ストーブとコタツはどうされますか?」
私
「(は??今まだ9月ですぜ???)大丈夫、要りません!いざとなれば寝袋持ってますから」
宿の方
「大丈夫ですかね・・・。ではお待ちしております。」
横向温泉は、福島市近辺から福島吾妻裏磐梯ラインに乗り、土湯温泉 (ここも、一度訪れたいな)を過ぎた山頂付近に位置します。この道路は普段は眺めが綺麗でとても気持ちよく駆け抜けることができるのですが、この日はあいにくの雨、しかも相当の霧が立ち込め、ドライブに若干の緊張が漂います。
到着してドアを開けると、・・・
私の心の声
「おお、ありがたい!ストーブが大活躍!!。寒かったもんな~」
「あああっ!、ストーブもコタツも要らないって言っちゃったよ・・・。9月にこんだけ寒いとは思わんなんだ。前言撤回し、コタツつけてもらおうかな。」
宿の方
「いらっしゃい。早かったのね~。寒いでしょう。ここは標高が高く、昨日から冬の天気よ。お客さんは要らないっておっしゃってたけど、コタツの部屋にさせていただきましたよ。コタツだけでも、だいぶ違うからね~」
私
「あ、ありがとうございます!(生意気言って、すんませんでした!!)」
宿の方
「ここにはな~んもないけど、お湯だけはいくらでもあるからね。ゆっくりしていってください。」
さて、温泉。
この写真は脱衣場から望んだものですが、向かって左側が熱め、右側がぬるめのお湯です。熱めといっても江戸前の銭湯のようなレベルではなく、ちょっと熱いかな、というくらいの温度 (43℃程度でしょうか)。鉄分が多く、湯の色は薄い茶色、そこに茶色の湯の華が舞っています。奥に開いている扉の向こうは川で、手作りの露天風呂があります。
到着してすぐ、夕食後、夜中、起床後の計3回、湯を楽しみましたが、他の宿泊客と一緒になったのは到着してすぐに入浴したときだけでした。
夜中、ぬるい湯にうつ伏せで半身を浮かべ、熱い湯に肩から先を伸ばし入れ、目を瞑ると・・・。耳に入るのは外の川のせせらぎと湯が惜しげもなく湯船に流れ込む音だけ。温泉、しかも人が手を加えない、大地から湧いたままの湯につかり、太古の昔から変わらない自然の音を耳にする。ちっぽけな人間が偉大なる自然に抱かれていることを強く実感したひと時でした。
(とはいえ、現代の現実は逆かもしれませんね。「偉大なる」人間がプラスチックやガスをまき散らし、「ちっぽけな」自然を破壊、地球環境さえも変えんとしてしまっている・・・。)
この宿では、共有スペースにおかれた古道具、書籍を「ご自由にお持ちください」とするサービスが。私は、1991年創刊の「SINRA」という雑誌の創刊から第3号までの3冊の雑誌をいただきました。中を見ると、今や懐かしのガジェットの数々が!!また、「うっわ!、この人、若~い!」等々、かなり楽しめます。楽しかった90年代、あれからはや30年も昔になってしまったのですね・・・。今度同年代の仲間と集まるときにこの雑誌を持参し、皆で楽しませていただきます!!
遅ればせながら、福島県の湯治場にようやくデビューしましたが、大満足でした。いずれ「私的温泉番付」をやってみたいのですが、ここは上位に食い込むこと間違いなしです!
今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!
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