クルマは走ってなんぼの実用機械、あまり考えたくないことですが、時として「ガリッ」→「アッチャー」なんてことをやらかしてしまうものです。
幸運にも線キズ程度で済んだ場合、タッチアップペンや同色スプレーで補修するという方法をとることができるでしょう。
しかし、不幸にもゆがみ、へこみが伴うレベルに至ってしまった場合はどうしましょうか?
金属部 (多くの場合はアルミで、板金修正は効かない)であれば、パテで埋めるという手が考えられます。しかし、プラスチックパーツ (バンパー、スポイラー、サイドスカート等)の場合はもっと簡便な修正方法が使えるかもしれません。
もっと簡単な修正方法とは?そう、お湯を利用するのです!!
バンパー等のプラスチックパーツの多くは、ポリプロピレンという樹脂で成形されています。ポリプロピレンにはホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマーといったいくつかのポリマー形態があり、用途に応じてその特性を人為的にモディファイすることができます。
ポリプロピレンの一番の特徴は、
●軽くて (比重が0.9程度で、プラスチックの中で最も軽い)、
●機械特性に優れ (強度、耐摩耗性がある)、
●耐熱・耐薬品性に優れる、
という点で、これらが自動車用途に求められる要件にマッチするため、自動車用部品の素材として広く利用されています。
バンパー等の部品は熱で成形され、成型後も通常の温度範囲(アラスカや砂漠地帯等、クルマが使用される極限の温度範囲内)ではその形を保ちます。なぜなら、その形を保つ方がエネルギー的に安定な状態にあるからです。しかし、相応の強い外力を与えれば、平たくいえばバンーパーをぶつけてしまえば、バンパーはゆがんだりへこんだりしてしまうわけですが、この状態はプラスチックにとってはエネルギーの高い、つまりストレスのかかった落ち着かない状態に相当します。プラスチックは、早く元のカタチに戻って落ち着きたい、と考えてはいますが、自分ひとりの力では元には戻れない。こんな時に湯をかけ軟化させ、つまりポリマー分子が動きやすい状態を作ってあげて、そのうえでほんの少しの力で押したり引いたりしてあげれば、プラスチックはいともカンタンに元の状態、すなわち落ち着ける元の形状に戻り、エネルギー的な安定を取り戻すわけです。
上に示した通りポリプロピレンは耐熱性に優れ、沸騰した湯をかけても変形はしません。ただ軟化するだけです。だから、ゆがみやへこみを修正する際には遠慮なく沸騰直後の熱湯をたっぷりかけ、十分に軟化した状態で修正を試みるほうがうまくいくようです。
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*ご自分でお試しになる場合は、自己で是非のご判断をなさってください。
*バンパー等の素材はポリプロピレンの他に、FRPやABS樹脂もあります。これらは相応の外力を与えるとささくれ立って割れてしまうため、お湯を使った再成形には向かないようです。ちなみに、FRPはFiber Reinforced Plastic (ファイバー繊維で補強したプラスチック)、ABS樹脂はAcrylonitrile Butadiene Styrene (アクリロニトリル ブタジエン スチレン樹脂)の略です。
*ポリプロピレンと異なり、耐熱性に劣るのが飲料ボトルに用いられるペット (PET; Poly Ethylene Telephthalate、ポリエチレンテレフタレート)です。ペットボトルに熱湯を注ぐと瞬時に変形しますので、お湯を運ぶコンテナとして使用してはなりません。容器に入れて細口で湯をあてたい時は、空き瓶を利用しましょう。焼酎の900mlの瓶などは、とても使い勝手がよいです。
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BMW F10に乗り換えてから、私はこのtips (裏技)を2回使用しました。あんまり何度も使いたくないtipsですが、アイキャッチ画像以外の施工事例を、以下に示します。
左写真のフェンダーアーチ付近、遠目にはなにも異常がないように見えますが・・・
拡大すると(写真右)、アーチの一部がぼっこりと飛び出してしまっているのがよくわかります。飛び出した部位周辺のクリア層にひびが入っているのも、画像を拡大いただくとお分かりかと思います。
飛び出した部分にたっぷりと熱湯をかけ (写真左)、やさしくプレスしてやれば (写真右)・・
あら不思議、飛び出してしまった部分が完全に元の形状に戻っています。拡大すればクリア層のひびが残っていることを確認できますが、これは別の方法で容易に修正することができます!
(この施工をしたのは、まだ残暑の残る10月初旬。バンパーには、誰かさんの半ズボン、ビーチサンダル姿が・・・。お恥ずかしい・・・。)
プラスティックの凹みはこうして修正できるとしても、不幸にもプラスティック表面に大きな傷跡が残ってしまった場合はどうすればよいでしょうか?
傷をパテで埋め塗装するというのが王道でしょうが、素人には色合わせが難しくなかなかうまくはいきません。こんな時は、カーラッピングフィルムを活用しましょう!
アイキャッチの画像のキズは、カーラッピングフィルムを活用してこのように補修しました。
いかがでしょうか。
なかなか素敵に補修できていると、自画自賛しています(笑)。
カーラッピングフィルムを活用したキズ補修の概要は、こちらの記事でご紹介しています。
フィルムを貼る、というのは、ちょっと前までは素人にはとても手に負えるものではありませんでした。しかし近年、材料や用具が飛躍的に進化し、ちょっとコツを掴めば素人にでも十分に施工できるレベルのものに仕上がっています。フィルムにまつわる材料や道具の進化について、こちらの記事でご紹介しています。
ブログ記事には各作業の概要を示すのみですが、私の著書にはドイツ車のメンテナンスに対する考え方から工具類の選定、国内外から部品やパーツを安く購入する方法までの全般を網羅的に紹介しております。ぜひ、お手にとってみてください。
その他、クルマを快調に保つレギュラーメインテナンスについて、こちらでご紹介しています。ぜひご参照ください。
今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!
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