長距離移動に際しては、季節を問わずウィンドウウォッシャーが非常に重要な役割を果たします。
夏場であればフロントガラスに付着した虫の除去、冬であれば対向車や先行車に引っ掛けられてしまった泥雪の除去、あるいはヘッドライトに積もった雪の除去に大活躍します。
高速道路に乗って長距離を一気に駆け抜けるような状況下ではふだんよりもかなり多量にウォッシャー液を消費してしまうことはわかっていましたが、それにしても最近のウォッシャー液の減りがあまりに著しい。満タンに補充してから2日ほどで「ピロ~ン!」という警告音が鳴るのは、やはり異常でしょう。
「ウォッシャー液の漏れ」をキーワードにネットを徘徊すると、これはどうもBMWでは定番の故障のひとつのようです。BMW E46カブリオレな話様をはじめとして、いろいろな方々が不具合をレポートされています。不具合の原因としてはウォッシャーポンプ本体の故障のほか、ストレーナー部の割れ、ホースのひび割れ等、いくつかの故障モードがあるようです。
とすれば、まずはタンクやウォッシャーポンプにアクセスせねばどんな部品が必要なのかを知ることもできないということです。では、開けていきましょう!
ウォッシャー液の注入口がエンジンルームの運転席側にあることからわかる通り、ウォッシャータンクはエンジンルーム内の運転席側に鎮座します。調べると、ご本尊は右フロントフェンダーアーチの後部にいらっしゃるとのこと。
右フロントをジャッキアップし、右ロアアーム下にリジッドラックをかませます (写真左)。フェンダーアーチは前後分割式になっていますが、ここでは後ろ側をめくります。後部アーチカバーを留めるボルト (10本程度)を外し、この部分の3本のリベット (写真中)を中央のピンをレンチ等で押し込ん (写真左)で外します。このリベットは再生不能との情報もあり、念のためあらかじめディーラーで予備を購入しておきました (写真下)。新品を見ると、外し方をたちどころに理解できますね。部品番号は 5116 1881 149 おひとつ66円也、合計396円(税込み)のお買い物でした。
このリベットを再生できるかどうかは抜き落とした中央のピンを回収できるかどうかにかかっているのですが、このピンが勢いよくどこかに飛んでいくなどということはなし、装着されていた部分の真下付近で無事回収、購入した予備のリベット (しかも、6本も・・・)はお蔵入り決定です (お蔵に入ってしまった部品たち、かなりの数にのぼります・・・)
タンク、ポンプ部、ホース部をためつすがめつ観察しますが、どこからも液が漏れている気配はありません。2日ほど前にウォッシャータンクに液を補充していますが、いまもってタンクは満タンのようです。穴の開くほど眺めてホントに穴が開いては困りますので、タンク周辺に問題ないと結論付け、元通りに組みなおしました。
私はドイツSonax社のカーケア商品を利用するケースが多いのですが、ウォッシャー液についてもSonax社製品を愛用しています。ただし、冬以外の季節のみ。残念ながら不凍剤が入っておらず、冬季は凍ってしまう可能性があるのです。
このウォッシャー液で私が気に入っている点は、以下です。
●ワイパーの動きがスムーズ (ビビらない。スムーズな動きのためにナノ成分を配合していると謳いますが、「ナノ成分」の詳細は不明)
●ウィンドウにこびりついた虫の死骸も綺麗に除去できる。
●100倍希釈なので、トランクの端にコンパクトにしまっておける。
●容量は250ml、100倍希釈なのでウォッシャー液としては25l分となります。これで2500円弱ですから2l(リットル)で200円、これだけの性能なのに格安です。
アマゾンでの評価が高いのも、うなずけます。
では、どうしてこのところのウォッシャー液の消費が激しかったのか?
想えば、高速道路を長距離を走っておりいつもよりも使用の頻度が高かったし、しかも夜間の走行がメインだった。
皆さんご存知のように、ヘッドライトを点灯した状態でウォッシャー液を出すと、フロントウィンドウのみならずヘッドライトにも液が噴射されます。そして、ヘッドライトへの噴射の勢いはかなり激しく、「ウィ~ン、ウィ~ン」という大音量と共に多量の液が排出されているようです。
定量的な見積りまではしませんでしたが、ウォッシャー液の著しい消費の原因はこのところ夜間の高速道路走行が多かったことだと、まずは仮定することにしました。
ところで、ヘッドライトにウォッシャー液を勢いよく噴射する目的は何でしょうか?
BMWの故郷、ドイツミュンヘン*1の冬季は非常に寒く、またかなりの積雪もあります。そう、ヘッドライトにウォッシャー液を噴出するのは、冬季に凍ってしまった、あるいは雪で覆われてしまったヘッドライト上の氷や雪を除去することが目的です。
ここは日本、しかもまだ初秋。ヘッドライトにまでウォッシャー液を噴射する必要は全くなさそうです。
ということで、ヘッドライトにウォッシャー液を噴射する機能をオフにすることにしました。そのために、コーディングという手法を用います。
コーディングをご存知でしょうか?
今どきのクルマは、全世界に輸出されます。輸出される国々における道路交通法は当然に異なるわけで、後退時にゴングを鳴らすことを義務付ける国もあれば、ディライトの点灯を義務付ける国もあります。それらに対応するため、配線を変えた複数種のクルマを生産していたのでは、部品の在庫や工数のロスが増え、自動車会社の利益を圧迫します。そこで、各国の法制で仕様を変えねばならぬ機能についてはコンピュータで制御するようにした上で同一のクルマを量産し、各国法規制に縛られる機能はコンピュータの設定で生産後に調整するという方法が採られています。このコンピュータで機能調整をすることを「コーディング」とよび、法規制に関わる機能はもとより、各人の好みに合わせた細かい機能の調整をも生産後に実施できるようにしてあるのです。ただし、法規制に関わる機能をも調整するという性質上、我々ユーザーが容易に設定を変更できるようになってはいません。コーディングのためには、専用のツールが必要になります。
ヘッドライトウォッシャーに関するコーディング項目については、その機能のオン (activate)/オフ (deactivate)のみならず、
① 噴射回数
2回 or 3回
② 噴射時間
0.6秒から2.0秒まで、0.2秒刻みで設定可能
③ 噴射間隔
②で設定した、2回 or 3回の噴射の間隔。0.6秒から2.0秒まで、0.2秒刻みで設定可能
④ ヘッドライト噴射に対する速度制限
なし (どんなスピードでも噴射)、あるいは160kph /100mph (160㎞/h (100mile/h)以上のスピードでは噴射しない)
といった細かい設定までもが可能です。
コーディングツールとしては様々なソフトウェア、アプリケーションが市場に出回り、これまで私は2つのソフトウェア、1つのアプリケーションを試してきましたが、現在はCarly for BMWに行きつきました。
Carly for BMWはドイツのチームが開発するアプリケーション (Android版、iOS版)で、以前はアプリケーションを買い上げることができたのですが、現在は年会費を支払うサブスクリプション形式に変わってしまいました。接続は、専用のアダプターを利用してスマートフォンとWiFiで接続します。言語は英語ですが、それほど難しいものではないと思います。
(英語でのやり取りが苦にならない方は、本国から直接購入した方が安価で入手できるようです)
このアプリケーションの素晴らしい点は、以下です。
① コーディング実施前に、変更前の設定をバックアップし、Carlyのクラウド上に保存してくれる点。
② サポートが迅速かつ丁寧な点。私は3度ほどサポートを求めましたが、ドイツと日本には8時間の時差があるにもかかわらず、1時間以内に回答が得られました。文法的にしっかりとした英文での返答で、英語非ネイティブにありがちな「何が言いたいの??」という文章ではありませんでした。
③ 直観的でわかりやすい操作画面。
コーディングについては、私もいろいろと遊んできましたし、非常に容易にクルマの可能性を拡げることのできる手法ですので、別の機会に詳細をご紹介する予定でいます。
なお、Carlyはコーディングだけでなく各種メインテナンスにも活用することができます。ブレーキの分解整備に活用した事例を、以下に示します。
ブログ記事には各作業の概要を示すのみですが、私の著書にはドイツ車のメンテナンスに対する考え方から工具類の選定、国内外から部品やパーツを安く購入する方法までの全般を網羅的に紹介しております。ぜひ、お手にとってみてください。
その他、BMWのレギュラーメインテナンスについてはこちらをご覧ください。
今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!
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