F10に乗り換える直前の愛車は水平対向6気筒のレガシィ ツーリングワゴン 3.0R、とても気持ちのよいエンジンでしたが、その構造上整備性に劣ることでも知られていました。特にシリンダー周りの整備性はよくなく、それゆえか、採用されたスパークプラグは長寿命の両白金タイプ (2つの電極の双方の受放電部に摩耗耐性の高い貴金属(プラチナ)チップを採用し、長寿命化を図ったプラグ)、100,000㎞走行時に一度だけディーラーで交換してもらいましたが、「スパークプラグ交換」を意識することは全くありませんでした。
乗り換えたF10はレガシィよりも新しいクルマ、然らば当然長寿命タイプのスパークプラグを装着しているものと思い込み、プラグに気を留めたことはありませんでした。
F10の購入後30,000㎞ほど走行すると、アイドリング中などにプルルッという振動を一定周期で体感できるようになってきました。さらにしばらくすると、出力を上げた際にモーレツにエンジンが振動し、しばらくおとなしく走ると振動が収まるという現象がみられるようになってきました。
ははぁ~ん、コイルが逝ったな、と思い診断機にかけると、果たして、1気筒で失火が起きていました。しかし、この期に及んでもまだスパークプラグに想いが至らないワタシ、「外車のイグニションコイルは弱いと聞くからな~」と、6気筒すべてのコイルを新調しました。
しかし・・・、そこから50㎞も走らないうちにまた例のプルルッというイヤな振動が・・・。
「ん?ハズレのコイルを買っちまったか?」と一瞬思ってしまいましたが 、冷静に失火の原因を考えるに、火花を散らすにはイグニションコイルとスパークプラグの2つの部品が必要なところ、今回交換したのはコイルのみ、ようよう「もしかして、プラグがダメになった?」と思うに至りました。
私のクルマのプラグの仕様を調べてみると、果たして、2つの電極のうちの中心電極だけがイリジウム、外側の接地電極はごくふつうのニッケル合金という構成の非長寿命タイプであることがわかりました・・・。中心電極だけに高価なイリジウムを採用するのは、放電効率をより高めるべく「細い」電極の形成が可能になるからであって、長寿命化を意図したものではないようです。
メーカー (NSK)のホームページを確認すると、推奨交換サイクル走行20,000㎞以下。また、プラグの交換を怠ると (高価な)イグニションコイルに高負荷がかかり、その寿命を縮めます、と・・・。
やっと、今回のトラブルの全容がみえました!
つまり、今回のトラブルは寿命を迎えつつあるスパークプラグを使い続けたことでイグニションコイルに要らぬ負担をかけ続け、その結果コイルを壊してしまったことが原因です。にもかかわらず、私はスパークプラグの寿命に想いが至らずイグニッションコイルを総交換、当然の帰結としてそれら新品コイルは全部壊すことになりました。ようやく、不具合がプラグにあることに思い至り、短命に終わらせてしまったイグニションコイルの再交換とスパークプラグの交換が必要になったのでした・・・・
スパークプラグ、コイル共に、交換に難しいことはありません。ただし、スパークプラグの装着には2つの注意点があります。
一つは、最初からプラグをレンチで締めこむのではなく、プラグのガスケットがエンジンヘッドに着座するまでは必ず手で締めこむこと。二つは、プラグの締め付けトルクを遵守すること。
これらを怠りエンジンヘッドに切られたネジ山を壊してしまうと、クルマの乗り換えも選択肢の一つに入れざるを得なくなるほどの出費が必要になるかもしれません。
ただし、交換自体は至極簡単、手順を以下に示します。
(ご自分で作業を実施されるかどうかは、ご自身でご判断ください。)
まずはエンジンカバーを外し (5mmの六角ネジを4本外すだけです)、ヘッド部を露出させます (写真左)。抜きたいプラグの (右から2番目の2番シリンダーを例にとっています)コネクタロック爪を上にあげ (写真中)、コネクタを引き抜きます(写真右)。
それからコイルを抜く (写真左)と、プラグホールからプラグの頭を望むことができます (写真中)。プラグレンチを装着したラチェットでプラグを緩めます (写真右)。
いったん緩めた後は、クイックスピナーを手で回してプラグを外します (写真左)。プラグのネジが完全に緩んだら、プラグを引き上げます (写真右)。プラグソケットに磁石が装着されていますので、引き揚げている最中にプラグが外れることはありません。
新しいプラグの装着は、上記と逆の手順で行います。
上記でも述べましたが、
① プラグがプラグホールに着座するまではラチェット等を使わず「手で締める」こと、
② プラグは既定のトルクで締め付けること (私のクルマの場合は、25N・m)
を遵守してください。
この一件以後、スパークプラグは走行15,000km毎、つまりオイル交換3回のサイクルで交換することにしました。スパークプラグとオイルの両方をを交換した直後はエンジンの快調をハッキリと体感できるため、年に1回くらいのプラグ交換はとても楽しみなイベントです。
ちなみに、走行15,000㎞毎にスパークプラグを交換するようにして以後、イグニッションコイルに不調はなく交換していません。前回交換からはや80,000㎞程を走行しており、いつ壊れても不思議ではない状況と思います。
でも、なかなか交換する気になれません。
徐々に劣化し性能を落としていくプラグの場合、交換の効果をハッキリと体感することができます。しかし、コイルは徐々に性能を落とす性質のものではなく、使えるか/使えないかのどちらかのもの。つまり、まだ「使える」状態で交換しても交換の効果を体感できるものではないのです。これが、予防的なコイルの交換を躊躇する理由ですが、遠方に出かけたときにコイルが逝ってしまっても困ります。だましだまし走って帰ることはできるでしょうが、気持ちよく駆けるためにクルマで出かけた意味がなくなってしまう。
そこで、今はいつでも交換できるよう、新品のイグニッションコイルを6本クルマに常備しています。もちろん、交換に必要なトルクレンチ、プラグソケットも常備です(笑)。
【後日談 (追記)】
別途ご紹介の予定ですが、ヘッドカバーガスケットを交換した際、プラグが異常に減っているのを発見しました (写真左)。まだ、交換後10,000㎞程しか走行していなかったのですが・・・。この機会に、イグニッションコイル、スパークプラグの双方を全交換しました (写真右)。交換後は、快調そのものです!
この作業に用いた代表的な工具の一部を、以下に示します。
*私は、差込角9.5㎜ (3/8 inch)のハンドツールを使用しています。
① スパークプラグレンチ 16mm
→ 私は、信頼のKTC社製品を使用しています。
② エクステンションバー 150mm
③ クイックスピンナー
→ 先端にスパークプラグレンチを装着したエクステンションバーを、最初は手で締めこむことになるのですが、これをエクステンションバーの端に装着して回すのとそうでないのとでは作業効率に大きな差が出ます。こちらも、信頼のKTC社製品を使用しています。
③ ユニバーサルジョイント
→ あった方がやりやすいという情報を見て購入しました。私はプラグ交換を始めた当初は一番奥(6番シリンダー)のプラグ脱着に使っていましたが、慣れてしまった今では使っていません。プラグ交換に必須の工具ではありませんが、いずれ「あってよかった」と思える日が必ず来ますので、この際に準備しておいてもよいかもしれません。ラムダセンサー交換時などは、これなしで作業ができません。
④ トルクレンチ (差込角9.5sq) 25N・m
→トルクレンチは、デジタル式のものよりも、機械式のもののほうが規定トルクに達した時にクリック感がしっかりと手に伝わり、トルク管理しやすいように思います (評価やレビューでも、機械式を推すものが多いように思います)。
20-100 Nm (9.5sq)、40-280 Nm (12.7sq)のレンジをカバーする2本があれば、エンジン整備から足回り整備まで、ひとととおりのトルク管理が可能です。安物ではなく、トルク校正のされた信頼の東日製作所の製品をおすすめします。
⑤ スパークプラグ NGK製 LZFR6AP11GS
→私のモデルに適合するプラグです。ご自分の車両に適合するか、必ずご確認の上お求めください。こちらに、NGK製プラグの適合検索/品番一覧が掲載されています。
(2020.11時点、この製品は3社中で楽天の入手性がよいです)
⑥ イグニッションコイル BOSCH製 0221504800 (BMW純正パーツ番号 12138616153)
→ 私のモデルに適合するコイルです。ご自分の車両に適合するか、必ずご確認の上お求めください。なお、純正コイルはDELPHAI製でBOSCH製品よりも若干高価ですが、私はBOSCH製品で不都合を感じたことはありません。
(2020.11時点、この製品は3社中でAmazonの入手性がよいです)
今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!
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