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エンジンオイルの役割と性能劣化の原因

修理・点検・メンテナンス
ガスケット交換のために、シリンダーヘッドカバーを開けたところ。スラッジのない、綺麗な状態でした!

 エンジンオイルは「エンジンの血液」と別称されることもある通り、エンジンにとって極めて重要な役割を果たします。
 さて、エンジンオイルの役割とは何でしょうか?大別して、5つの役割があるようです。

  1. 潤滑作用
  2. 清浄分散作用
  3. 冷却作用
  4. 密封作用
  5. 防錆防食作用

 エンジンオイルはベースオイル(鉱物油 (mineral oil)、部分合成油 (partially synthetic oil)、全合成油 (full synthetic oil)等が代表的です)と添加剤とで構成され、上記5つの機能を発揮します。
 上から順にみていきましょう。

 1. の潤滑作用は、ほとんどがベースオイルの特性に左右されます。1.の典型的な指標は粘度ですが、これは高ければ高いほど、あるいは低ければ低いほどよいというものではなく、メーカーの指定粘度に準拠させる必要があります。粘度は 0W-40のように表記されますが、これは冷間時 (冬場 (winter))と温間時の、2つの温度状態での粘度を示しています。オイルの粘度は温度に依存し、温度が低い/高いほど粘度は低く (つまり、固く)/高く (つまり、柔らかく)なります。また、オイル粘度の数値は大きいほど粘度が高いことを意味します。このことを前提に、0W-40と5W-30のオイルを比べてみましょう。0W-40のオイルは5W-30のオイルと比べ、「冬場の粘度は低く (柔らかく)、高負荷をかけた時(≒高温時)でも粘度を高い (固い)状態に保つ」ということがいえます。つまり0W-40の方がより広い温度範囲でエンジンに適する粘度を提供できるわけで、同じ銘柄のオイルであれば0W-40の方が5w-30のオイルよりも高価であるのが普通です。

Mobil1 5w-40


Mobil1 0w-40


 2.の清浄分散作用はほぼ添加剤の性能に左右され、ベースオイルの種類とはあまり関係がありません。エンジンを回転させるということは閉じ込められた空間内でガソリンを燃やすこととほぼ同義で、このことによりカーボンが発生しそれがオイルと混ざりスラッジを生成します。スラッジの生成を放置すればエンジン内部のオイル流路がヘドロで詰まったようになり、エンジンの寿命をも縮めます。これを防ぐために、添加剤がカーボン取り囲み、オイル内に分散させます。この清浄分散作用が、カーボンが特定個所に留まりスラッジ化することを防ぐのです。
 下は、日本石鹸洗剤工業会のウェブサイトからお借りした、界面活性剤が固体粒子を分散させるイメージ図です。こちらは固体粒子を「水中」に分散させる図であり、いま我々が考えているのは固体粒子(カーボン)を「油中」に分散させること、あくまでもイメージ図として捉えていただきたいのですが、清浄分散作用の理解を助けてくれるかと思います。
(①の固体粒子を「カーボン」、水を「オイル」、②の界面活性剤分子を「添加剤」と読み替えてください)

 3.の冷却作用は読んで字の如く、冷却水と併用でオイルそのものがエンジンを冷却する作用を果たすことを意味します。国産車よりも欧州車の方がオイルを積極的に冷却に利用する傾向が強いようで、同じ排気量のクルマで比較した場合、後者の方が必要とするオイル量が多いケースが多いように思います。この作用は添加剤とはほぼ無関係で、ベースオイルに依存します。

 エンジンの動力の源は気化させたガソリンを燃焼し膨張させた燃焼ガスで、これがシリンダー内でピストンを押し下げます。ピストンとシリンダーに隙間があるとガスが漏れてパワーロスしますので、ピストンにピストンリングを装着してシリンダーとの隙間を埋めますが、あまりギチギチに隙間を埋めればピストンが運動できなくなってしまいます。そこで、ピストンリングとシリンダーの隙間を少し開けておき、そこをオイルで密閉します。これが4.の密閉作用で基本的にはベースオイルに依存しますが、添加剤で油膜を強化することでその作用を高めているようです。
(Castrol社のEdgeは、ウェブサト上でそう謳っています*2)

 5.の防錆・防食作用は錆や腐食を防ぐ作用で、オイルがエンジン内部をコートすることで酸化を防ぎその役割を果たします。これは、ベースオイルと、そこに添加された防錆・防食剤の双方に依存します。

 これまでみてきたように、エンジンオイルの性能はベースオイルと添加剤の双方によって発揮され、言い換えれば、その寿命はベースオイルと添加剤の劣化の双方に左右されるといえるでしょう。
 となれば、どちらかの劣化を促進してしまうような使い方は極力避けたいわけですが、我々はどのようなことに注意すればよいのでしょうか?

 添加剤について、これはある一定量のカーボンを取り込み分散させれば、またある期間分の防錆・防食作用を発揮すれば寿命を迎えるものであり、我々の使い方によってその寿命をコントロールすることはできません
 我々の使い方でその寿命をコントロールし得るのは、ベースオイルの方です。寿命をコントロールし得るといっても、我々にできることは寿命が極端に短くなることを避けることだけで、伸ばすことはできませんが・・・。

 ベースオイルの寿命を縮めないために、我々はどのようなことに留意すればよいのでしょうか?
 ベースオイルの寿命に関するキーワードは溶解 (希釈)と乳化ですが、後者は今時期の冬場に特に留意が必要なファクターです。
 ベースオイルの寿命を縮めないポイントについては、次回以降にご紹介します!

 クルマの調子を保つための定期メンテナンス項目は、こちらにまとめています。ぜひご参照ください。

今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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