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BMWのブレーキフルードを加圧式パワーブリーダーで交換する

修理・点検・メンテナンス

 クルマのブレーキは油圧で動作します。その作動油(ブレーキフルード、ブレーキオイル)にはグリコール系の液体が用いられますが、定期的な交換が必須です。

 なぜブレーキフルードを定期的に交換する必要があるのか?
 それは、主成分であるグリコール系液体が吸湿しやすい特徴を持っているからです。BMW F10シリーズでメーカー指定のDOT4グレードのブレーキフルードの場合、ドライ沸点(吸湿していない状態での沸点)は230℃以上です。ところが経時によりフルードが吸湿するにつれ、その沸点は下がってゆきます。ブレーキは運動エネルギーを熱に変換することでクルマを制動するシステムですので、その作動油であるフルードの沸点が下がれば制動時に発生する熱で沸騰してしまいます。ブレーキライン内でフルードが沸騰する(フルードに混入した水分が気体に相変化する)ということはライン内に多量の空気が混入するのと同じことで、そうなればいくらブレーキを踏んでも空気がつぶれるだけ、つまりブレーキスカスカの状態に陥ります。これはフルードがパッドに力を伝達しブレーキディスクを挟み込むという本来の役割を果たさない、非常に危険な状態です。こうした状態を避けるために、吸湿したフルード新品フルードに入れ替える作業が定期的に必要になってくるのです。最低でも2年に1度、つまり車検毎の交換が推奨されますが、私はだいたい年に1度は交換するようにしています。

 ブレーキフルードの交換方法はいくつもあります。

 もっともオーソドックスなのが2人作業で、一人がブレーキを踏んだらもう一人がブリーダープラグを開けフルードを排出させ再びプラグを閉める、を声を掛け合いながら繰り返す方法。

 それから、逆流防止弁付きの器具を使う方法。これはブリーダープラグを開けた状態で器具を装着しておき、ブレーキを踏む、戻すを繰り返す方法で、1人作業が可能です。

 もう一つがパワーブリーダーを使う方法。これはブレーキリザーブタンクに圧をかけておき、ブリーダープラグを開けフルードが排出される(リザーブタンク内の体積が減少する)とその減少分だけパワーブリーダーから新しいフルードが供給される仕組みで、こちらも一人作業が可能です。

 これらのうち、BMWのTIS(Technical Information System)が推奨しているのはパワーブリーダーを使う方法です。この方法はマスターシリンダーやABSに空気が混入した場合でも対応できるし、作業時にマスターシリンダー内のシールを痛めない(ブリーダープラグを開けた状態でブレーキを踏めば通常よりも深くブレーキペダルを踏めてしまいますが、これがシールを痛めることがある)から推奨されているのかもしれません。

 私は、こちらの手動ポンプを備えたパワーブリーダーを使います。ディーラーや街の修理工場では、電動ポンプを備えたブリーダーが使われますが、原理は全く同じです。



 さて、手順です。

 まず、リザーブタンクのキャップにつながるコネクタ(液量センサー用でしょう)を抜き、キャップを外します。フロートがついていますが、ここからフルードがたれて塗装面に付いたりしないよう十分に注意してください。フルードは塗装面を痛めます。万一塗装面に付着してしまった場合は、水で洗い流してください。フルード交換作業の際はいつも手元に水を準備しておいた方がよいです。

 それから、リザーブタンク内の古いフルードを抜き取り、新しいフルードを補充します。こうすれば、古いフルードをブレーキシステム内に注入することを避けられます。

 これら準備が整ったら、パワーブリーダーと共に購入しておいた欧州車用アタッチメントをリザーブタンク装着します。そしてパワーブリーダーと結合するのですが、この真鍮の結合ネジの部分からリークしやすいので、工具を使ってシッカリ締めることをおススメします



 パワーブリーダーのハンドルを上下にポンピングし、内圧を1.5barに加圧します。そのまま5分ほど放置し、内圧に変化がない(リークがない)ことを確認します。そしたらパワーブリーダーのキャップを開けブレーキフルードを投入、キャップを閉めてから再び1.5barに加圧します。これで、ブリーダー側の準備は完了です。

 ブレーキ側の準備に取り掛かりましょう。ブレーキフルードの交換やブレーキラインのエア抜きは、マスターシリンダーから遠い方から近い方へと順番に行います。つまり、右ハンドルのクルマの場合、左後ろ、右後ろ、左前、右前の順番です。

 まず左後ろブレーキのブリーダーキャップを外し、10mmのメガネレンチをかけます。そしてペットボトル(廃液受け)につなげたチューブをブリーダーキャップに装着し、レンチでキャップを緩めます。すると、古いフルードが抜けてきますので200ml強抜き、エアが抜けてこないことを確認してキャップを締めます。チューブを外したら水やブレーキパーツクリーナーで周囲を洗浄し、キャップを締めて完了です。これを4輪実施したら、作業完了です。

 ブレーキフルードの交換量について、排出される液の色が古いフルードの色から新しいフルードの色に変わったらOK、なんて書いてある本もありますが、新旧のフルードの色がよほど異なるならともかく、なかなか見分けられるものではありません。フルードを100%交換できるのが理想ですが、80%も交換すれば性能は充分に取り戻せるでしょうから、あまり神経質にならなくてもいいように私は考えています。それよりも、1年に1回など頻度を決めてシッカリ交換、メンテナンスすることの方が大切に思います。

ブレーキフルードは、私は純正品を使用しています。



 純正よりも一段よいものを、と望まれる方には、ドイツのブレーキ関連名門メーカーAteのこちらの製品の評価が高いです。



 廃液受けは私は今回はペットボトルで代用しましたが、もうちょっとスマートに・・・、ということで、MOTIVE社の純正品を購入しました。



 ブレーキの分解整備については、こちらの記事で紹介しています。

 その他、BMWのレギュラーメンテナンス総合については以下のリンクをご覧ください。

 

今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!

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