一昔前までオートマチックトランスミッションは機械式で、シフトレーバーの操作ボタンを押してガチャガチャと操作したものでした。ベンツのゲート式のシフトは非常に特徴的で、クルマ好きの憧れでした。
いまやオートマチックトランスミッションは電子式で、シフトレーバーはスイッチとしての機能しか持ちません。電子式に切り替わった恩恵でパドルシフト等、運転を楽しむ要素が増えたのですが、困った問題が生じました。
シフトレンジがPのままエンジンが動かなくなってしまったら、どうやってPレンジから解放できるのか?という問題です。
機械式ATの場合はシフトレバー付近にある赤いボタンを押せば、エンジンがかからなくともシフト操作が可能です。しかし、電子式ATの場合、エンジンがかからねばシフトレバーを操作してもなにも変化はしないのです。
ええ、こんなことは普段は一切気にする必要はないのです。
問題となるのは、車載車等による救護を頼まねばならなくなったケースです。
これまで私は、Vベルト切れで一度、クランク各センサー故障で一度、加入保険のロードサービスで車載車の救援をお願いしました。
また、意図せぬ積雪に見舞われた時、JAFに車載車の救援をお願いしました。
(雪でスタックした場合、通常の保険ロードサービスはノーマルタイヤ装着車を救援対象外 (自己責任)としているようです。この場合は、JAFにお願いするしかありません)
上記のケースでは、一応エンジンをかけることはできましたので、エンジンをかけ、PレンジからNレンジに切替えて積載作業をしてもらいました。
困ったのは、ヘッドカバーガスケットを交換しようとヘッドカバーを外したものの、ガスケットのサイズが微妙に合わず元に戻せなくなった時のことでした。
当然エンジンをかけることはできず、シフトポジションをPから動かすことができません。
この時はエンジンマウントの交換をお願いしたショップに救護をお願いしましたが、ショップオーナーが過去の経験を元に策を練るも、うまくいきません。
ショップオーナーが試されようとしていたのは下図の方法で、オレンジ色の解除ツールを探すべくトランクのエマージェンシーボックスを漁ったり、カップホルダーを外してそれらしき箇所を探っても、何も見つかりませんでした。
この間、私はTIS (Technical Information System)とにらめっこし、Pレンジ解除の方法を探ります。
すると、その方法がシッカリと記載されているのを見付けました!
そう、クルマをジャッキアップしてアンダーカバーを外し、ATFオイルパンの横にあるヘックスボルトを締めあげることで、機械的にPレンジを解除できるということがわかりました。
上図の黒い部分が、ATオイルパンです。
あいにく、その日は雨。私とオーナーとで半泣きになりながらクルマをジャッキアップ、クルマの下にもぐり、TISの手順に従いPレンジを解除、無事に車載車に搭載することができました。
その時は平地の駐車場でしたので上記の方法が採れましたが、私の現在の駐車場は立体式で、ジャッキアップなどできません。また、雨ならまだしも、周囲が雪なら、これもジャッキアップなどできません。
こんな時どうすればよいのでしょうか?
ある時、ふと思いつきました。
ある時、というのは、ブレーキの分解整備をしていた時です。
いつもはジャッキアップ後、ホイールを外してからブレーキサービスモードに入れるのですが、この時はブレーキサービスモードに入れてからジャッキアップ、ホイールを外そうとしていました。
すると、・・・。
ホイールボルトを外そうにも、タイヤも一緒に回ってしまうではありませんか??
そう、Carlyでブレーキサービスモードに入れると、リアブレーキのピストンが奥に戻りきるだけでなく、Pレンジ時にかかっているAT内のロックも解除される、ということなのです。
これは、大きな発見です。
エンジンをかけることができずとも、OBD Ⅱコネクターは常時電源オンなので、ここからCarly等のシステムを通じてブレーキをサービスモードに移行できる可能性があるのです。
であれば、雪の中であろうが立体駐車場であろうが関係はありません。
トラブル時は様々な要因が重る場合が多いので、上記で必ずPレンジから脱出できるとは限りません。
しかし、いざというときの策の一つとして憶えておくと、大きな決定打となってくれるかもしれません。
本ブログ記事には各作業の概要を示すのみですが、私の著書にはドイツ車のメンテナンスに対する考え方から工具類の選定、国内外から部品やパーツを安く購入する方法までの全般を網羅的に紹介しております。ぜひ、お手にとってみてください。
今回は、ここまで。
次の機会にお会いしましょう!
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